事例:「Yammerを使い続けて思うこと:実務で使った方が社内SNSは素早く定着する?」
企業内 SNS 導入事例として、株式会社 co-meeting の Takaaki Yano さんが自社で導入・展開し一年間利用した Yammer について、とても実践的な内容をブログにポストされているので、紹介したい。
● Yammerを使い続けて思うこと:実務で使った方が社内SNSは素早く定着する?
● Yammerを使い続けて思うこと②:チームで社内SNSを利用する価値
● 2011年を振り返ってみる – co-meetingとCrowyとコワーキング
Yammer は 今年 Microsoft による大型買収で話題になったが、もともと企業向け SNS サービスとして知られており、外資企業系を中心に多くの企業ユーザーが存在する(逆にまだ Microsoft のプレゼンスは皆無だ)。システム的には Twitter よりは Facebook 似で、最近はアップデートの都度ますますその近似性を増している。
クローズドなメールとオープンなソーシャル
この co-meeting 社の Yammer 活用事例に特徴的なのは、なにか特別な効果を求めて「ソーシャル」を導入した訳ではない、という点だ。あくまで自社のワークスタイルに適合するツール(システム)を求めた結果として Yammer を選択している。
チームでありながら独立した仕事をパラレルで実施することが多い中で、それぞれの仕事の状況をチームメンバーが把握できる手段と環境が欲しいがために利用しました。ですので、別にツールは何でも良かったんです。仕事の状況をササッと記載することができ、気になることがあれば即座にコメントをしたり、そのままディスカッションしてしまったりする。不在時に電話がかかってくれば、メモの代わりに情報を伝達するために使う。
必ずしも e メールが非効率だから、とスタートした訳ではないのだ。Takaaki Yano さん自身「こういったことは、別にメールで もできないことはない」と書いている。しかしその一方「メールの管理は基本個人毎に行われることになるので、メンバー全員が常に同じ情報を見ることはできない」ともある。
この e メールと、システムとしてのソーシャルの差異は、ひとつ大きなポイントであると思う。つまり「クローズド」なコミュニケーションツールとしての e メールと、反対に「オープン」なソーシャルという違いだ。
システムとしてのソーシャルは、ひらけた場で業務コミュニケーションを展開する。そのため、必然的に連絡内容はすべての関係者に見えてしまう。つまり、業務が「見える化」される。
業務コミュニケーションが可視化されることで、相互に気付きが生まれ、また常に「見られている」ことで業務のスピードと質が向上する。ここでは Yammer が浸透した副次効果として、次のような(いわゆるソーシャル的な)業務改善効果が挙げられているが、この構図が、以前紹介した、もったいない本舗(Zyncro)事例と酷似していることは偶然ではないだろう。
チームメンバーのタスク、それに伴う課題、解決策の共有
アウトプット(成果物)の質の向上
タスクに対するチームメンバーの当事者意識の向上
情報共有のスピードアップ
個々のストレスの分散
チームの結束力の向上
即効的のある「小規模チーム」による導入
Yammerのような社内SNSは、Twitterのようなマスで緩やかなコミュニケーションを目的にするよりも小規模のチームの実務で利用してしまった方が早いような気がしています。TwitterやFacebookの利用でもそうですが、様々な人々が見ている可能性のある場で発言をするのは初心者であれば勇気が必要ですし、慣れていても発言内容に気を使う必要があります。逆につかわずに継続していれば、どこかでトラブルに見舞われる可能性さえあります。
これは重要な指摘だと思う。前述の通り、システムとしてのソーシャルの効果は「コミュニケーションのオープン化」をベースとしているが、現実問題として、企業内でこれを成立させることは難しい。発言に所属部署や役割といった立場が強く結びついてしまうからだ。個人として匿名、あるいはすべての責任を自身でおえるインターネット上のコミュニケーションとの違いである。
いかに「個人としての発言」を強調しても、こればかりはどうしようもない。大きな組織であれば、部署間で利害が対立することは珍しくなく(例えば営業と物流、開発と製造)、その間での発言には高いレベルのバランス感覚が要求される。となれば、発言を敬遠するユーザーが増えることは寧ろ当然だ。
また、Twitter/Facebook 的な短文による素早いコミュニケーションスタイルは、コンテキスト(会話の背景や方向性)が共有されないメンバーの間では、成立が難しくなる。正しい意図が伝わらずに誤解を招き易いからだ。
誤解を招き易いにも関わらず、責任は重い。これは致命的だ。
ただ、これは裏を返せば、コンテキストが共有できる比較的狭いグループ単位であれば、この「見える化」効果を容易に得ることができる、ということだ。通常はいち部署や、ワーキンググループ、委員会などになるだろう。仮に全社一斉導入するとしても、実際には細かくグループを切り、小さなコミュニティ単位で利用をはじめるような展開が、「ソーシャル」導入の勘所になるのかもしれない。