楽天の電子書籍リーダー「Kobo glo」レビュー

| 2012年11月20日

巷では Apple の「iPad mini」や Amazon の「Kindle Paperwhite」、それに Microsoft の「Surface」がなにかと話題だが、しかし、そこをあえて、楽天の新しい電子書籍リーダー「Kobo glo」を購入してみたので、実際に使用した感想を投稿したい。

Kobo Touch との違い

左が Kobo glo、右が Kobo Touch だ。見ての通り Kobo glo は筐体正面の物理ボタン(いわゆるホームボタン)が廃され、総タッチ方式になったことから、若干であるが小型化している。とはいえ、材質は同じであり、基本的なハンドリング感に大きな違いはない。なお、この写真ではわからないが、裏面のメッシュ模様が大柄になり、Touch にあった「女物の化粧ポーチのような」印象は薄れた。

一方、画面の解像度は 600*800 から 728*1024 に向上している。大解像度に慣れてしまった昨今では、この数字が大きいとは思えないかもしれないが、実際に Kobo Touch と比較するとこれ程の差がある。

動作については、触った限りでは大きな違いを感じられなかったが、スクリーンの白さは少しだけ増しており、並べて比較しないと判らないレベルではあるものの、より「紙」に近いフィーリングになっている。

そして、Kobo glo 最大の特徴がバックライトだ。筐体の右上縁、電源ボタンと並んで物理ボタンが配されており、押下するとスクリーンが裏側から発光する。強力ではないものの、読書には十分な光量だ。

バックライトと解像度の優位性

Kobo touch と glo の違いは、突き詰めると「解像度」と「バックライト」に過ぎないのだか、実用してみるとこの差は案外大きい。バックライトがあることで「就寝前に(電気を消した部屋で)少し読書する」「(照明方向の都合で)逆光の状態で本を読む」といったことが無理なくできる。光も適度に柔かく、長時間の読書もそれもど苦にならない。

解像度については、物理的な画面の小ささもあり、まだ十分とは言えないが、しかし、例えば漫画のようなコンテンツを扱う上ではようやく実用的といえる解像度になった言えるだろう。なお、こうした Kobo glo の仕様は、バックライトも含め、ほぼ完全に Kindle Paperwhite 互換になっている。

総合的読書体験はまだまだ。しかし外部メモリは利用価値大

前回「総合的な読書の快適さを考えると、現時点ではまだ iPad のようなタブレット端末が勝る」と指摘したが、その辺りに大きな変化は無い。Amazon Kindle の日本発売を前に、「楽天と kobo も、如何にこうした電子書籍ならではの読書環境を早期に構築できるかが、課題といえる」とも書いたが、残念ながら楽天がその時間を上手く使えた、とは言い難いようだ。

総書籍数ばかりを追いかけた結果、ストアには「楽譜1ページの本」「Wiki丸写しの本」「写真1枚の本」が溢れ、あげく消費者庁から誇大表示で行政指導されてしまう始末。スマートフォン向けアプリも「制作する」と発表されただけで、まだリリースされていない。

とはいえ、Kobo には Kindle にない良さもある。それは「CBZ形式に対応」「外部メモリに対応」しているという二点だ。

CBZ は、Jpeg などの画像ファイルを、まとめて ZIP 形式で圧縮したものだ。Kindle はこの形式に対応していないが、Kobo はこれをひとつの「本」と認識し、画像をページとして表示することができる。

この何が嬉しいか、といえば、漫画や小説、あるいは資料の「自炊」に最適だということだ。画像データを ChainLP のようなソフトで 728*1024 サイズに最適化すれば、全く不都合無く読むことができる。同じことは PDF でもできるのだが、CBZ のほうが取り回しやすく、また(Kobo上では)レスポンスが良い。

そして、漫画のような画像コンテンツは、どうしてもテキストベースの電子書籍よりも大きな容量(数十MB〜百MB強)が必要になる。1〜2GB程度しか空き容量がない Kindle や Kobo では、あっというまに容量不足に陥ってしまうだろう。

しかし、Kobo は外部メモリ(Micro SDカード)に対応しているため、実質的に 32GB まで容量を拡張することが出来る。さらに、ワンタッチで差し替えも可能だ。自炊ユーザーには、とても実用的な端末であると言えるだろう。ただし、大量のデータを保存したメモリカードを挿入すると、初回の「認識」プロセスに非常に時間がかかる。そこはマイナスポイントだ。

目は疲れる?疲れない?

少し話はずれるが、検眼医の研究結果として「電子ペーパーも液晶もかわらない」との記事が10月に掲載された。しかし、この内容には大きな違和感を感じざるを得ない。何故なら、私自身の体験として「パソコンのディスプレイ」と「Kindle/Kobo」との読書を日常的に比較した際、後者のほうが明らかに疲労度が低いからだ。

その結果は、2種類のディスプレイでの読書に大きな差は認められず、それぞれのディスプレイでの読書の影響は主観的尺度、客観的尺度の両方で非常に類似しているとある。眼精疲労に関する質問結果は、液晶ディスプレイの方が若干スコアが高いもののほとんど同じで、読書スピードについては実質的には同一だったという。

ただし、この調査でも「主観的な全般的疲労」については、大きな差があったとしている。

唯一大きな差となったのは全般的疲労。液晶ディスプレイで読書した被験者は電子インクディスプレイの被験者よりも高い疲労度を報告したというが、これは iPad と PRS-600 の重量を勘案する必要があるだろう。

私の場合、PCのディスプレイは実質的に「重量ゼロ」なのだが…。とはいえ、きちんとした調査である以上、ディスプレイか e-ink かが「眼精疲労に」直接的に影響する事は無いのだろう。私が感じている「疲労」はなにか別の要因、要素によるものなのかもしれない。

Kobo glo は「買い」か?

Kobo glo は実質的に Kobo Touch + 解像度・バックライトだが、価格的に1000円しか差がない(以前の Kobo Touch と同価格だが、glo の発売にあわせて Touch が1000円値下がりした)ため、明らかにこちらがお得だ。正直、今から Touch を購入する理由は、ちょっと思いつかない。

一方、Kindle と比べてどうかと言われれば、まだ実際に最新の Kindle に触れていないので断言できないのだが、あなたが自炊派かどうかによるだろう。ストアとその周辺の充実度合いはあきらかに Kindle が上だ。とくに洋書を読むのであれば Kindle 一択だろう。しかし、Kindle は外部メディアに非対応のため、自炊派には厳しい。明らかに Kobo 優位だ。

だがそもそも、Amazon の kindle にしても楽天の Kobo にしても、まだまだ日本語コンテンツの充実度合いには乏しい。加えて前回指摘したように、相当的な読書体験は、iPad のようなタブレットがまだまだ圧倒的にすぐれている。その意味で、「今 e-book を買うべきか」と言われれば、それはなかなか難しい問題ではある。結局は個人の生活スタイル次第、ということになるだろうか。

楽天の電子書籍端末「kobo(コボ)」を購入した感想 その他

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