salesforce のソーシャル定義「ソーシャルエンタープライズ」と私が感じる違和感
このブログでも度々指摘しているように「ソーシャル(企業内ソーシャル)」をとりまく議論がなかなか深まらないのは、そもそもソーシャルとは何を指すのか?という要が明確に定義されないままであるからだ。大抵の場合「twitterまたFacebookのようなもの」程度で、状況としては「クラウド」に似ている。暫くすればどちらも「バズワード」入りすることになるのではないか、と懸念している。
そうした中で、クラウド系ベンダーである salesforce 社は、「ソーシャルエンタープライズ」という独自概念(*1)を提唱し、この点について、比較的きちんとした見解を提示している。
Cloud Days 2012:顧客の「声」を最大限に利用するソーシャルエンタープライズの実現を
この構図の特徴は「いわゆるソーシャル」をきちんと三つの領域に区分した上で顧客を中心とした半円にプロットし、その相互関連性を強調している点だ。そして、それらを総体的にビジネスに活かすことができる企業こそが「ソーシャルエンタープライズ」である、と提唱している。
これは salesforce 社の実践に基づいた優れた図式であるとは思う。だが、その一方、やや厳しい見方をすれば salesforce 社の提供する製品/サービス(とそのユースケース)を横に並べただけ、と言えなくもない。
そう考えるのは、私が二点、この図式に違和感を感じているからだ。
まず、「従業員ソーシャルネットワーク」が強化されることで「カスタマーソーシャルネットワーク」も円滑に廻る、という説明は、本当だろうか?両者は全く異なる性質のものであるように思える。
確かに、社員間の意思疎通がスムーズになれば顧客サービスは向上するかもしれない(ソーシャルで意思疎通がスムーズになる、という前提についても本当は疑う必要があるのだが、ここでは考えないものとする)。しかし、それは「カスタマーソーシャルネットワーク」とはまた違う話だし、そもそも SFA や CRM システムを強化した方が直接的な効果が期待できないか。
次に、この図式では「パブリックソーシャルネットワーク」と「カスタマーソーシャルネットワーク」が区別されているが、はたして両者は別ものなのだろうか?突き詰めれば、どちらも Web におけるソーシャルネットワークとどのように(ビジネス的に)向き合うか、という単一の領域あり、「販売/サポート〜製品」という要素はあくまでアプローチ(システム)の違いに過ぎないのではないだろうか。
あえて別けるとすれば、1.短期的なマーケティング手段としてソーシャルメディアを捉えるか、2.中長期的なリレーション構築媒体とするか、という方向性の違いがあるだけではないかと思う。
なお、この点は誤解がないようにしたいのだが、このエントリは salesforce 社やこの「ソーシャルエンタープライズ」に対する批判や反論をなんら意図していない。単に、私自身のソーシャル観からこの「ソーシャルエンタープライズ」を観た際に感じた違和感を整理したにすぎず、これを切口のひとつとして、より議論を深めたいと考えている。
*1 salesforce社はこの「ソーシャルエンタープライズ」の商標登録を申請したが、既に「社会貢献を重視する企業」として一般的に利用されているという反対意見が提起され、申請の取り下げおよび、以後この用語をマーケティングに利用しないことを発表している
・セールスフォース・ドットコム、「ソーシャルエンタープライズ」の商標登録申請を取り下げ
・セールスフォース、「ソーシャルエンタープライズ」の商標登録申請を取り下げ
・“ソーシャルエンタープライズ”という用語はもう使いません セールスフォース・ドットコムが宣言