[書籍レビュー] 外資系エリートのシンプルな伝え方(澤円)

| 2014年12月15日

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中経出版からつい先日出版されたビジネス書「外資系エリートのシンプルな伝え方」がとても興味深かったので、紹介しておきたい。

澤 円(さわまどか)氏

著者の澤氏は、日本マイクロソフトの現テクノロジーセンター長、簡単に言うと「偉い人」だ。ゆえに業務領域は多岐に渡るが、顧客企業の経営層にむけたプレゼンテーションがその重要な一角を占める。つまり「(価値を)伝えること」が仕事だ。

そして澤氏は、このプレゼンテーションという領域におけるトッププレゼンテーターの一人として認知されており、IT 関係者を中心にファンも多い。まあ、実のところ、私もファンの一人だ。その為、この紹介エントリには若干のいわゆる「ステマ」成分が含まれている(かもしれない)ことは否定しない。

プレゼンテーション本でなくコミュニケーション本

さて、そうした澤氏のため、本書はいわゆる「プレゼンテーション啓発本」ではない。プレゼンだけでなく、より広範なビジネスシーンを想定しつつ、個別のテクニックよりも「どうすれば自分の考えを正しく、ポジティブに伝えられるのか。そしてビジネスが上手く回るのか」という本質的な命題について、氏の考えがまとめられている。

─と書くと、なにやら小難しい印象をもたれるかもしれないが、実際には だ。そもそもタイトルからして「シンプルな伝え方」なのだ。本書は(氏のプレゼンがそうであるように)、簡潔で、具体的で、わかりやすい。全体でも約 200 ページ程度で、一日で読み切れる。

結論は第一章にある

前書きと第一章の約 50ページで、澤氏の問題意識と、それに対する 5 つのアプローチが語られる。実のところ、本書の要訣はこの 50 ページにすべて詰まっている、と言っていいだろう。

まず自分を知り、コミュニケーションの軸をつくること(自分の価値をみつけることから始めよう)。他者に役立つために、自身の短所より長所に着目すること(得意技を磨き、不得意分野は切る)。目の前の相手だけでなくその ”先” を想定すること(自分と相手以外の第三者を想定する)。シンプルに本質を掴み行動指針を単純化すること(やるべきことを単純化し「やるしかない」にもっていく)。そしてグローバル化や価値観の多様化を前提に、確実に伝わる言葉で話すこと(誰にでも伝わる言葉をつくる)。

以降は、様々なビジネスシーンにおいて、この 5 項目をいかに実践するかの具体論、という構成になっている。ビジネスメール(第一章)、オンラインチャット(第二章)、商談をはじめとするリアルな会話(第三章)、そしてもちろん、プレゼンテーション(第四章)。

こと、第二章「実績に結びつくチャットの技術」は、Lync/Skype という製品をもち、それを自社内で積極活用しているマイクロソフトの社員だからこそ説得力をもって書ける内容であり、とても興味深い。実際に決算報告会において行われるという「オンライン根回し」は意思決定の迅速化という観点から素晴らしいの一言。ぜひ、日本企業の経営者も活用して、「長い」「決まらない」「持ち越す」会議を改革して欲しいところだ。

こんな人におすすめしたい

本書をおすすめするとすれば、まずは新入社員、あるいは二~三年目の若手ビジネスパーソンだろうか。特に第一章「トップも動かすメールの技術」は、日常業務の多くをしめる ”メール”、こと上司とのコミュニケーションを如何にすべきか、という内容であり、日々の業務にそのまま活用できる。前向きなビジネスパーソンであれば、遥か先を走る「先輩」が、コミュニケーションの要訣を具体的に噛み砕いた本書は、まさにバイブルになる筈だ。

しかし、私がより強くおすすめしたいのは、実はその上司側、30 代後半から 40 代のビジネスパーソンだ。この年代になれば、コミュニケーションについて、一定の「自分なりの考え/方法論」が確立されていることだろう。しかし、それでもなお何かの限界、行き詰まり感があるのなら、本書は「先駆者のベストプラクティス」として意義深い。澤氏の思考を自らと比較し、単に模倣するのではなく、自身の立場や能力、個性を前提に、そこから何を取捨選択すべきかを考える。コミュニケーションに対する認識を深め、より高いステージを目指す触媒として、本書はとりわけ有益であると思う。

外資系エリート社員の「暴露本」?

本書はその体裁として、いわゆるプレゼンテーションノウハウ本だが、私にはむしろ「第一線のトップランナーが、”コミュニケーション” を如何に捉え、どのようにアプローチしているのか」という貴重な暴露本(?)に思えた。前述の通り気軽に読み進めることができるので、ぜひ一度、手に取ってみて欲しい。ちなみに Kindle 版もある

Filed in: 雑記
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