Windows Phone 7.5 (IS12T / au)の私的感想〜企業ユースにおける可能性

| 2012年1月11日 | 0 Comments

ちまたで話題…だった筈なのだが、ソフトバンクとauのiPhone4S発売合戦、そしてドコモのiPhone採用!?などという話も飛び出て、すっかり日陰扱いになってしまった感のあるWindows Phone 7。確かにiPhoneやAndroidに比べれば普及率はまだまだだ。しかしMicrosoft製品ということで、企業ユースを考えるシステム担当者には気になる携帯端末の筈。そこで、現状における端末・OS評価のようなものをまとめてみたい。もちろん個人的な感想だ。

「企業ユースに高い可能性」

最初に大事なことから書いておくと、私はiPhone3GSユーザで(つい先日4Sに機種変更した)、「情報端末」としてのiPhoneをとてもとても気に入っている。だからその分バイアスがあることは否定しないし、どうしてもiPhone3GSと比較してどうか?という視点になる。

その目で見て、Windows Phone7.5(IS12T)は、残念ながら「まだまだ」だ。旧世代機であるiPhone3GSから(私の)メイン機の座を奪うことができないのは、やはり少々情けない。最新のXboxが PlayStation3ではなくPlayStation2に負けているようなものだ。

しかし、その要因の数々(後述)はこれから修正可能だし、確実にされるだろう。その前提で考えると、私は(将来の)Windows Phoneを、とりわけ企業ユースの携帯端末として極めて高く評価している。

その理由は、iPhoneともAndroidとも異なるWindows Phoneの設計思想にある。

こう言ってしまうとミもフタもないが、AndoroidはiPhoneによく似ている(苦笑)基本的な設計思想やGUI周りはほとんど同じ。Andorodのほうがユーザやハードベンダに大きな権限を与えており、自由度が高い。一方、iPhoneはAppleが中央集権的にコントロールを効かせているので、不自由だがより洗練されている。

この差はAppleとGoogleのビジネスモデルに起因するのだろう。しかし、一般ユーザからみれば、正直なところどちらも同じようなものだ。誤解を恐れずに言えば、同一ライン上で「制約の度合い」がやや異なるに過ぎない。

[自由]─An──iOS─[制約]

ところが、WindowsPhoneはこのライン上における位置が大きく違う。

[自由]─An─iOS─────────────WP──[制約]

…さすがにこれは強調しすぎたかもしれない。

一見、Windows Phoneは制約が厳しくて駄目だ、と見えるかもしれないが、それは違う。確かに、私のような色々弄くりたい種の人間には不満なのだが、制約は同時に「洗練」「わかり易さ」「使い易さ」そして「セキュリティ」に繋がる。先進的と評価される「メトロUI」も、画面の情報量をギリギリまで絞り込むことで、確かに直感的な操作性に大きく貢献している。

まさに、これがWindows Phoneの設計思想だ(と私は理解している)。あえてユーザの自由を制限することで、美しく、使い易く、わかり易く、そしてかつセキュリティ的に堅牢なスマートフォン端末を実現している。

私にとりAndoridやiPhoneは「非力だがハンディーなPC端末」という位置づけのデバイスだ。しかしWIndows Phoneについては従来の「ガラケー」がスマートフォンと融合し、本当の意味で「高機能な携帯用情報端末」となった印象をうけた。スマートケーとでも呼ぼうか。

企業で社員、とりわけ外回りの営業担当にスマートフォンを持たせる場合、実際に必要な機能(それを行うことで業務効果が高い機能)かなり絞られるだろう。誰もスマホで提案資料作成などしない。必要なのは、特定情報へのスピーディなアクセス、そしてユビキタスなメッセージングだ。

テクノロジーそのものに価値を見いださない大多数の社員にとり、多機能なスマートフォンは「難しい」。(従来のガラケーも十分複雑だったが、そもそも通話やメッセージング以外の機能を利用していなかった)機能が絞りこまれ、GUIもシンプルなWindows Phoneであれば、そのギャップを最低限におさえることが可能だろう。

更に、企業ユースにおいては情報セキュリティが最大の問題になる。この点において、OSの構造上「不自由」なWindows Phoneはこのところウィルスやスパイアプリで騒がしいAndroidやiPhoneと比較して圧倒的に高セキュリティであることは間違いない。

以上を勘案すると、AndroidやiPhoneではなく、Windows Phoneこそが(少なくともその設計思想においては)最も企業ユースに適しているのではないか、と私はかなり本気で確信している。

「…でもまだ50点」

心情的にはあまり触れたくないのだが(笑)以下、私がWindows Phone(LS12T)を利用して感じた「悪いところ」いくつか率直に挙げる。

アプリが少ない。数字としてはそれなりにあるし、一通りは揃っている。しかし、やはり母数の(圧倒的)差は、個々のクオリティに影響する。自分の好みにピッタリなアプリを見つける事は難しい。

辞書登録ができない。これはかなり不便。フリックは便利だし、予測変換も悪くないが、やはり定型文や業界用語は登録しておかないと非効率。

現時点でキャリアメールがまともに使えない。受信可能だが送信不可。これはキャリア(au)側の問題だが…

表示が日本語に最適化されていない。スタイリッシュなメトロGUIも日本語ではイマイチだし、むしろ読みにくいことも少なくない(文字が不適切に大きい、小さい)。実機が手元にある方は是非英語モードにしてみてほしい。ハッキリ言って段違いに格好いい。

入力も日本語に最適化されていない。予測変換を使うと語尾に半角スペースが挿入される。逆に日本語キーボードに「スペース」が無いので、半角スペースをワンタッチで入力できない。明らかに英語前提の仕様。

大抵のアプリで日本語フォントがおかしい。これはダブルバイト文字のデフォルトが中国字体のため、アプリ開発者が明示的に指定しないとこうなるらしい。

iPhoneに慣れた目で見てしまうとWebフォントが汚い。ブラウジングが苦痛。これはWindows Phone固有の問題ではないのだが、画面が小さいだけによけい気になる。

カーブフリックは好評。ただし自由自在に使いこなすにはかなりの修行が必要。どちらの方向に「カーブ」させたら望む結果を得られるのかを体で覚えていないと、結局濁点ボタンの方が速い。

IE(標準ブラウザアプリ)が(iPhone/Safariとの比較だが)使いにくい。ページ表示が遅い。製品シェアの低さからWebサイト側の対応が進んでおらず、「スマホ」と認識してくれないためフルブラウザ用サイトが表示される事も一因。

タッチ感度が良いようで悪い。スクロールは素晴らしく「ぬるぬるさくさく」で、Androidのようなひっかかりを感じる事は無い。しかし「意図しない動作の発生率」が(私は)iPhoneと比べて明らかに高い。特にソフトウェアキーボード。

Officeファイルの再現度は素晴らしい。が、エクセルでオブジェクト(吹き出しなどのテキスト領域)に対応できていないのは個人的に大減点。

回転ロック不可。スクリーンキャプチャ不可。UNDOなし。一見それ程重要に思えない機能だが、無いと案外不便なものだ。

以上、いくつかと言いつつ、案外沢山になったが…愛だと考えて頂きたい(苦笑)しかし、上記の問題はほとんどすべて時間(OSアップデート)で解決できるし、されるだろう。

「エンタープライズ路線に期待」

MicrosoftはWindows Phoneのマーケティングについて、コンシューマ重視に見受けられる。それが歴史的なMicrosoftの「勝ちパターン」なのだから当然ではある。しかし、個人的には、Windows Phoneについては、ぜひどこかで諦めて(笑)エンタープライズに大きく「振って」欲しいものだと思う。

現時点ではまだ夢物語ではあるが、Windows OS、Windows Server(特にSharePoint)との親和性をより高め、さらにActive DirectoryのグループポリシーでWindows Phoneが細かく制御できるようになれば、企業ユースにおける最強の端末になり得るだろう。

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